民法は、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」と規定しており(民法896条本文)、これを包括承継主義の原則と言います。
包括承継とは、「相続」という一つの原因に基づいて、被相続人に属していた様々な権利義務が、一括して相続人に承継される、ということです。これに対し、特定承継とは、売り主に属していた特定の財産権が、個々の「売買」によって、買主に個別に移転していくことです。
しかし、例外的に、以下のものは、包括承継の対象(相続の対象)となりません。
■一身専属的な権利義務(被相続人の人格・身分と強く結びついたもの)
被相続人に属した財産のうち「被相続人の一身に専属した」権利義務については、相続の対象とはなりません(同法896条但し書)。
わかりやすい例としては、被相続人が無償で土地を借りていた場合の借主の地位(同法599条)、委任者・受任者の地位(同法653条)などです。また、扶養の権利義務(同法887条)・親権(同法820条)も一身専属的なものであると考えられています。
■被相続人の死亡時に発生するが、被相続人に属しない財産
〇死亡保険金
死亡保険金については、受取人を誰にしたかによって相続の対象となるかどうかが変わります。まず、受取人が被相続人自らの場合は相続の対象となります。しかし、受取人が特定の相続人になっていたり(最決平成16年10月29日民集58巻7号1979頁)、誰かを特定せずに「相続人」とされていたりするような場合(最判昭和40年2月2日民集19巻1号1頁)は、相続の対象とはなりません。
〇死亡退職金・遺族給付
これらは、遺族の生活を保障する趣旨で、特定の遺族に与えられる場合が多く、そのような場合には、相続の対象に当たらないと考えられています。
〇香典
香典は、喪主に対する贈与であり、相続の対象とはならないと考えられています。
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